バベルの塔

チャールズ・クラーク編「フラウィウス・ヨセフス全著作」
1785年   ロンドン
銅版画
「バベルの塔」を建築画的に描いた珍しい一枚で、またこのようにほとんど完成した状態に見えるものも他にはあまりないように思います。 情報を整理し、出来るだけ客観的に科学的に描こうという制作者の意図を感じる作品で、まさに啓蒙時代の作品と言えるでしょう。

フラウィウス・ヨセフス(37年−100年頃)は帝政ローマ期の政治家・歴史家。 エルサレムの祭司の家に生まれたユダヤ人ですが、ユダヤ戦争の初期に戦いに敗れローマ軍に投降、その後はローマ軍の幕僚としてユダヤ人との交渉に奔走しますが失敗し、エルサレム陥落を目撃します。 フラウィウスは自らの経験を基に「ユダヤ戦記」を書き高い評価を得、晩年には天地創造からの歴史を描いた大作「ユダヤ古代誌」を著しました。 ヨセフスの著作は聖書を別にすれば、その後のヨーロッパで最も読まれた本と言われています。

この図版はチャールズ・クラークがギリシャ語の原書から翻訳した「フラウィウス・ヨセフス全著作」に収められたものです。