世界地図

ジョヴァンニ・ジャコモ・デ・ロッシ
「マーキュリー地理学」
1674年   ローマ
手彩色銅版画
デ・ロッシ(1627年−91年)は16世紀からローマで出版事業をしていた一族に生まれ、1648年に父親のジョゼッペ・デ・ロッシが残した原版を基に自らの工房を立ち上げ、ローマで最大の出版工房に育て上げた実力者で、カスティリオーネ、テスタ、グリマルディなど錚々たる作家の原版を有していました。

この世界地図が収められた地図帳は、ニコラ・サンソン、ジャコモ・カンテリ、ミシェル・アントニオ・ボードランなどの地図制作者の作った地図を集めて、1660年頃から1730年頃まで徐々に収録地図を増やしながら出版されました。

二重半球型のこの世界地図は、17世紀フランス最高の地図制作者と言われるニコラ・サンソン(1600年−67年)が作った世界地図を基に制作されています。 サンソンは最初の世界地図を1651年に出版しますが、1660年に改訂版を作ります。 デ・ロッシのこの地図は最新情報を加えた改訂版が基になっています。 身近な太平洋地域での変更点は、北海道と思われる陸地がアジア大陸と繋がっているように描かれ、北方列島の先に巨大な蝦夷地(カンパニーアイランド)が加えられています。 オーストラリアがより正確に描かれ、ニュージーランドの海岸線の一部が加えられています。

この地図の彫版はアムステルダムの彫版師ジャン・リュイリエが行いましたが、サンソンの地図にあった古典的な四角い枠を廃し、スッキリとしたイタリアらしい優美な地図に仕上げられています 。

下部中央付近に元々付いていた紙の撚りシワが少しあります。

変更が加えられた日本部分。 Yupiと名された北海道と思われる陸地の先に北方列島、その先にTerra di Iesso(蝦夷地)という巨大な陸地が描かれています。 その右にはカリフォルニアが島で描かれています。 世界にはカリフォルニアが島で描かれている地図ばかり集めているコレクターが数多くいます。 

南太平洋部分。 ニュージーランドの海岸線の一部、タスマニアの一部が加えられています。