ヨーロッパ・地中海全図

アンリ・アブラハム・シャトラン
「歴史地図帳」
1705年−20年   アムステルダム
手彩色銅版画
「歴史地図帳」は、地理学者シャトラン(1684年−1743年)が作った地理学に比重を置いたこの時代を代表する百科全書で、全七巻からなっています。 地図はシャトランが制作し、解説はニコラ・グードゥヴィルが担当しました。 どの地図も通常の地図には無い様々な情報が満載で、まさに当時の百科事典的な知識の宝庫です。

一癖も二癖もあるシャトランの地図ですから、この地図もただの地図ではありません。 ヨーロッパ・地中海全図としましたが、実はヨーロッパ、アジア、アフリカで宗教会議が行われた都市を解説している地図です。 下に大きなA to Zの表があり、都市の位置とその都市での会議の開催年度が記されています。 有名無名に関係なく開催された都市のみの記載になっているのが面白いです。 地図上の都市名の横に数字がありますが、それはその都市で行われた会議の回数を示しています。 このような意味合いの地図なので、国名は記されていますが、国境線などは省かれています。 しかし宗教会議が行われた場所を網羅する地図という性格から、結果としてあまり描かれることのない地中海全体が見渡せる地図になりました。 「歴史地図帳」の名に恥じない珍しい地図です。

地図部分の拡大図です。 例えば、ローマの横に60と記されていますが、ローマでは60回宗教会議が開かれているという意味です。 流石にローマは最多回数を誇っております。

下のA to Zの表の拡大図です。 都市名の横に会議開催年度が全て記されています。 凄い情報量です。