新世界図(アメリカ大陸図)

セバスチャン・ムンスター
「世界誌」
1540年   バーゼル
木版画
その後の地図の歴史に多大な影響を与えたドイツの高名な地図制作者ムンスター(1489−1552)が1540年に作り、1544年からバーゼルで出版された「世界誌」に収められた世界最古の版画によるアメリカ大陸図で(世界で初めて地図帳で4大陸図を発表したのはムンスターです)、その興味尽きない記述においてアメリカ地図制作史上、他に類を見ない作品です。

当時西回り航路によって極東を目指していたスペインの旗がカリブ海に、東回り航路をとっていたポルトガルの旗がアフリカ西岸に配されています。 北米は右にひしゃげており、カナダ(Francisca)とニューイングランドが、当時存在が信じられていた架空のヴェラザーノ海によって離され、細い土地で辛うじて繋がれています。 ブラジルには人食い(カンニバリズム)が描かれており、木から足や首が吊るされています。 太平洋上には日本(Zipangri)が描かれていますが、当時ヨーロッパでは現在より小さく太平洋が予測されており、日本はアメリカ寄りに存在していると考えられていました。 したがって日本はアジア図ではなくアメリカ図に登場しています。 印刷された地図で初めて太平洋(Mare Pacificum)という名前が使用されましたが、太平洋沿岸部の地名はほとんどマルコポーロの記述に拠っています。 また日本の下には、マゼランのマゼラン海峡発見を祝って、マゼラン艦隊の唯一の生き残りであるヴィクトリア号が描かれています。

通常この地図はセンターの折り目部分にダメージを持っているものがほとんどですが、この版画は目立ったダメージが何も無く、今まで見てきた中でも最高峰のコンディションです。

版画部分の拡大図です。 

マルコ・ポーロ「東方見聞録」(1298年)の記述通り、7448の島に囲まれた王国ジパングです。 

ブラジルのカンニバリズム(人食い)。 木の右上に頭、左端に足が吊るされています。 右はポルトガルの旗。 

カリブ海部分の拡大図です。 スペインの旗が翻っています。 

額の正面図。 幅60mm、最大の高さ27mm、本チーク3本組、節目の少ない最高級のチーク材を使ったフルオーダーフレームです。 実際の色は写真ほど赤っぽくなく、また濃くもありません。 

額を横から見たところ。 力強い木版画の線によく合う、上下に動きのある古典的なイメージの落ち着いた額です。