北方アジア(タルタリア)地図

ルイ・シャルル・デスノス
「地理学学習地図帳」
1790年   パリ
手彩色銅版画+鋳造活字印刷
ルイ・シャルル・デスノス(1725年?−1805年)はパリの地理学者、地球儀制作者、出版者で、デンマーク王クリスチャン7世の王室付き地球儀制作者でした。 地図の分野では自ら作るよりも、他の地図制作者が作ったものを出版することに力を注ぎ、当時の制作者の地図から過去に作られた地図にいたるまで相当な数を出版しました。 時には版権の問題で争いが起こったほどでした。

この北方アジア図はルイ・ブリオン・ド・ラ・トゥール(1756年−1823年)が制作し、デスノスが1790年に出版した「地理学学習地図帳」に収められたものです。 面白いのは中央の銅版印刷された地図の両側に、別に鋳造活字印刷(活版印刷)された解説(テキスト)が貼り込まれていることです。 従来ですとテキストも一緒に銅版仕立てにされるところですが、この方が手間が掛かりませんし、沢山の情報が盛り込める訳です。

この地図での日本は、ブリオン・ド・ラ・トゥールが作った単独日本地図に準じた形をしていますが、それには表れていなかった北海道の上部以北がここでは描かれており、北海道の形はまだ変ですが、千島列島、樺太、カムチャッカなどの配置はかなり現実に近くなってきています。

デスノスはブリオン・ド・ラ・トゥールと関係が深く、彼の地図を多く出版しています。 この北方アジア図もデスノスは何度か装飾を変えて出版しており、テキストの無い地図だけのものも出しています。

この地図の制作者ルイ・ブリオン・ド・ラ・トゥールは王室付き地図製図技師という称号を与えられ、生前には沢山の地図を制作したにも関わらず、その生涯については不思議なことにほとんど分かっていません。

中央地図部分の拡大図です。