日本地図

ヨドクス・ホンディウス
「メルカトル地図帳」
1606年   アムステルダム
手彩色銅版画
フランダースの地理学者で有能な彫版師でもあるホンディウス(1563年−1612年)は、初めて地図帳にアトラスと言う名を用い、メルカトル図法でも有名なジェラルド・メルカトル(1512年−94年)からメルカトルの死後、地図帳の原版を手に入れ、メルカトルの地図107枚に、新たに自身の地図36枚を加えてホンディウス版「メルカトル地図帳」を1606年に発表します。 この地図帳は大好評を博し、それまでベストセラーだったオルテリウスの地図帳を、その地位から引き摺り下ろしてしまうほどでした。

この日本地図はメルカトルが日本単独地図を作らなかったため、新たにホンディウスによって加えられた一枚ですが、地図自体は実はオルテリウスの地図帳に1595年から収録されたルイス・テイセラの日本地図の忠実なコピーです。 初めて本州、四国、九州がほぼ正確な対比で描かれたテイセラの日本地図の出現は衝撃的で、数多くのコピーが以後作られるようになります。 ホンディウスの日本地図はテイセラの地図のコピーの中で最も早いアトラスサイズの地図ですが、テイセラと異なる最も重要で興味深い点は、島として描かれた朝鮮のところにテイセラの地図には無い「島であるか半島であるか、まだ分からない」という記述があることです。 これは当時としてはかなり進んだ見解でした。 さらに装飾的にも、葦で編まれた帆を持つ日本の船や海獣などが新たに加えられ、見ても賑やかで楽しい地図になっています。

当店では文中で引用した1595年のテイセラの日本地図も在庫しておりますので、ご興味がございましたらお問い合わせください。

九州、瀬戸内地域の拡大図です。 九州に鹿児島(Cangaxuma)、大隅(Osumi)、平戸(Firando)など、四国に土佐(Tonsa)、讃岐(Samuqui)、阿波(Ava)など、本州には長門(Nagato)、安芸(Aquy)、堺(Sacay)などの地名が記されています。 地図は見るのではなく読む、の醍醐味です。 

戦国時代の大舞台であった地域の拡大図です。 駿河(Surunga)、尾張(Vlloari)、美濃(Mino)、甲斐(Cay)、越後(Hiechigo)、そしてもちろん京都(Meaco)など満載です。 

朝鮮の拡大図です。 テイセラの地図では単に朝鮮の島(Corea Insvla)としか記されていなかった部分に、朝鮮は半島かもしれないという新説が述べられています。 そしてこれもテイセラの地図には無い南京湾(Enseada Nanquin)という半島説を意識したような名が、16世紀らしい美しいイタリック体の文字で中国と朝鮮の間に書き添えられています。 

葦で編んだ帆をもつ日本の船とありますが、中国っぽいです。 

16世紀的なカルトゥーシュの中にスペインとドイツのスケール、上に描かれたコンパスがアカデミック感を増しています。 でも文字は華麗なイタリック体で書かれていて、優雅な雰囲気に溢れた地図になっています。