万有時計(北半球図)

ヨハン・バプティスト・ホーマン
「新地図帳」
1720年頃   ニュルンベルク
手彩色銅版画
18世紀ドイツを代表する地図製作者集団ホーマン一族の長ヨハン・バプティスト・ホーマン(1664年−1724年)が、1705年にニュルンベルクの時計職人ザハリアス・ランデック(?−1738年)に作らせた万有時計とその機能を解説した版画です。

中心には極地を軸にした北半球図を配し、その周りに24時間のダイヤルを付けることでそれぞれの地域の時差が分かるようになっています。 その外側に12星座のダイヤルを置き、地域の夏至の時期が示されています。 そして一番外側に24時間時計のダイヤルがあり、太陽の形をした針が時刻を刻んでいます。 流石に地図製作者が作らせただけあって、アイデア満載の凄い時計です。

北半球図は小さいながら当時の最新情報を取り入れて精密に描かれています。 日本も巨大な蝦夷が本州と繋がった形で大きく描かれています。 カリフォルニアは島になっています。 北極地域は地図の歴史で最後まで分からなかった所なので、小さな地図ですが、当時の地図制作者の苦労が偲ばれて大変興味深いです。

この時計は19世紀後半までニュルンベルクのFembohausに置かれていましたが、その後は競売に掛けられました。

ババリア地方で生まれたホーマンは当初イエズス会の学校で学びドミニコ会修道士を目指しましたが、後に新教に鞍替えし、ニュルンベルクに来て公証人の職を得ました。 その後ウィーンで数年間版画技術を学んだホーマンはニュルンベルクに戻り、1702年に自らの工房を設立します。 それからホーマンは精力的に次々と地図を製作して行きますが、極めて精密な彫版技術、寓意的な装飾性、鮮やかな彩色を持ったホーマンの地図は忽ち評判になり、遂には時の神聖ローマ帝国皇帝カール六世の目にも留まり、1715年には皇帝付き地図製作者に指名されるまでになりました。 同じ年にベルリン王立科学アカデミーの会員にも選出されます。 皇帝付き地図製作者になったことで、ホーマンは帝国の有する門外不出の地理学情報にも接する特権を得ることになり、ますます地図製作者としての権威を高めて行きました。 ホーマンが皇帝付き地図製作者になってから作られた地図には特権を得て製作されたことの証「Cum Priviligio」と誇らしげに記されています。

この地図は1712年に既にホーマンの地図帳に収められた記録がありますが、「Cum Priviligio」の刻印があるので、1715年以降の版で出版されたものでしょう。

時計文字盤の中心にある北半球図。 左上の大きな大陸はユーラシア、その下に日本が見えます。 右下にはカリフォルニアが島で描かれています。 周りのダイヤルは24分割されており、地域の時差が分かる仕掛けです。 

太陽の形をした針、夏至の時期を示す12星座のダイヤル、24時間時計のダイヤルの拡大図です。